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スタートアップ企業で働くことのメリットとデメリット(後編)

2020-04-28






前号の振り返り

前号では、以下のようなスタートアップ企業で働くメリットをお話しました。

①若いうちから裁量をもって大きな仕事ができる

②会社の成長を中から体感できる

③世の中に今までなかった新しいサービス、技術を生み出すことができる

④ストックオプションをもらうことで、上場等の暁には大きな報酬を手にすることができる

ただ一方でデメリットもあり、そのデメリットを考察することも大事と書きました。 本号ではデメリットの考察を中心にお話していきたいと思っています。

それではスタートアップ企業で働くデメリットとは、どのようなものが考えられるでしょうか。

①安定感がない

②給与が低い

③教育システムがない

こんなところでしょうか。

それでは一つ一つ考えていきたいと思います。

① 安定感がない

安定という言葉は、人の不安を煽る上では便利かもしれません。スタートアップはいわゆる社歴の長い上場企業(以下、大企業)と比べると(一般論として)事業面・財務面で弱いのは事実です。

では、個人からみた時に、この安定感のなさはどのようなデメリットに繋がるのでしょうか?

会社が潰れるリスク

自分が働いている会社が倒産してしまうリスクは大手企業と比べて大きいです。仮に会社が潰れてしまった場合、転職回数が増えてしまうことになるので、次の転職活動を考えると不安を持たれる方もでてくるでしょう。また、転職活動をしている期間は給与が入らないため、そのリスクはありますね。

一方で、スタートアップが流行っている昨今では、大手企業がスタートアップで経験を積んだ人を採用しようとする動きも少なくありません。また、スタートアップ間での転職は「いつから来れますか?では来週からお願いします。」ということも少なくないため、意外と次の仕事にすぐつきやすい方が多いように感じます。この場合、その方の経験値を期待しての採用のため、特に転職回数等を気にされない会社も比較的多いように見受けられます。

会社が窮地に追い込まれた時に給料が減るリスク

会社のキャッシュが回っていない時に社員の給料が減給されるというリスクは存在します。もちろん、法律の範囲内ではありますが、業績の悪化が自分の給料やボーナスに直結しやすいのはリスクかもしれません。しかしその分、スタートアップには(個人の実力に対して報酬を支払う考え方を持っている会社が多いので)成果を出した時には報酬を多くもらいやすく、またストック・オプション制度などのエクイティによるインセンティブ制度を設けている会社では、自分の成果が会社の成長につながり、そして結果として会社の成長が自分の報酬に返ってくる仕組みとなっているため、リスクはありつつもリターンのほうが大きいと考える方は多いようです。

キャリアの説明が難しくなる可能性がある

スタートアップで仕事をしていると、慢性的な人不足から、営業が人事も兼任で担当する。デザイナーが広告の運用も担当するというような別の仕事をすることも少なくありません。結果的に、この会社では何をしていましたか?という質問に対して、説明が難しくなるケースもあるでしょう。確かにこの場合、専門性を持ったキャリアの人から見るとデメリットにもなり得ます。一方で複数の仕事を経験することで今まで自分自身でも気づいていなかった能力が見つかったり、プロフェッショナル×ゼネラリスト的な人材に自身を成長させることも可能となるため、(個人の志向にもよりますが)キャリアチェンジの良い機会になるとも言えます。

安定しないことはデメリットなのか?

世間からは安定していると思われている大企業でも、昨今はリストラを頻繁に実施しているのはみなさんもご存じでしょう。リーマンショック時や、不祥事発覚時、そして今回のコロナでもそのような動きが出てくるかもしれません。また子会社売却や事業譲渡など、組織ごと売却することで安定してると考えている大企業からの離脱を余儀なくされるケースも今後、ますます増えてくると考えられます。こう考えると、一見安定していると思われている大企業でも、個人面から見てみると、不安定とまではいわないまでも安定しているとは言い難いかもしれません。これまでの日本型における終身雇用システムが崩壊した現在(経団連も終身雇用の維持は難しいと言っている)、企業の安定性だけで自身の働く先を考えるのは危険かもしれません。

②給与が低い

次に、報酬についてもう少し詳しく触れていきます。スタートアップ企業は事業を成長させるために、事業に対する投資を続けながら成長をしていきます。そのため潤沢なキャッシュを常に持っているわけではありません。一方で大企業は(一般的には)安定的にキャッシュを獲得できる事業を持っているので、一定程度の給与制度と福利厚生システムをもっていると言われています。

給与が低いというのはどれぐらいのことを言うのか?

よくスタートアップに転職をした大手出身の方が、「給料半分ぐらいになったよ。」と言うことを口にすることを耳にします。これは一般的に以下の二つの理由が挙げられます。

一つ目は、「スタートアップはどれぐらい成果が出るか分からない人に最初から大きな報酬を出すことができない。」ということです(ただしこれは昨今の大企業も同じかもしれないですね)。これは前項の内容からも予測ができる内容かと思います。

二つ目は、「スタートアップが採用に力を入れるときは、会社が一番踏ん張りどきの時(成長の坂を大きく駆け上がる時)」と言う点にあります。スタートアップは計画を立案し、その計画達成のために資金調達を実施し、その調達した資金を投資することで、大体1年〜2年ぐらいの期間をかけて成長していきます。そして、その計画の達成度合いに応じて再び資金調達の計画を行い事業を軌道に乗せた上で、上場や売却を目指していきます。そのため資金調達時の瞬間が、一番キャッシュがありながらも使い方に慎重にならなければいけないタイミング(効果的かつ高効率的に事業を成長させることができる部分に投資をしなければならない)となります。そのため計画通りに事業が成長し、売上がしっかりと見込めるようになったタイミングで社員の給与の見直し、社員の待遇を向上させていく会社は少なくありません。つまり、会社の成長と社員の待遇の見直しには、タイミング的に若干のズレが発生してしまうことが一因となっています。

スタートアップの給与は大手と比較すると低いが、昇進がしやすいため高い給与も得やすい

スタートアップ企業は大企業でよく言われているような年功序列による昇進システムではなく、結果を出した人間や将来が期待できる人間にはポジションと責任を与えガンガン仕事をさせてくれます。そしてその成果としての給与は必ずしも低いものではありません。(同世代で比べた、大企業のいわゆる若手ポジションとスタートアップの責任あるポジションの比較として)

大企業とスタートアップ企業の給与を同じ職階で比べてしまうと確かに大企業のほうが上かもしれませんが、同世代の人間が得ている大企業とスタートアップ企業の報酬で比べると、スタートアップ企業のほうが責任のあるポジションに就いている人間が多いため、必ずしもスタートアップ企業が劣っているわけではないと考えられます。それに加え、スタートアップ企業では、前号で記載したストックオプション制度といったようなエクイティ報酬制度を導入している会社も多いため、会社が成長した場合はさらなる対価(それこそ大企業では得ることのできないような)を得ることも可能です。そのため、大企業だから給与が多い、スタートアップ企業は給与が少ない、といった議論は一概にはできないでしょう。

③教育システムがない

最後に教育体制について触れていきます。

大企業は良くも悪くも新卒一括採用のシステムが機能しているため、人事を中心として組まれたしっかりとした教育システムを持っている企業が多いです。一方で、スタートアップ企業はOJTを中心とした教育が主流かもしれません。個人的には新卒時の大企業の教育システムはとても手厚く優れているものと感じています。大学生から社会人になるための教育メニューが一通り網羅されており、このメニューを給与をもらえながら受けることができる、素晴らしいシステムです。

しかしその後、仕事を通して力をつけていく段階では、大企業であろうがスタートアップ企業であろうが、仕事を通して自分なりに課題を見つけ、周囲に聞いたり自分で調べたり学校に行ったりして自己の意識で成長させていくしかありません。そのためこの点では新卒時の教育システムを除くと、結局、自分次第なのではないかと感じます。

スタートアップではどうやって成長していけばいいのか?

では、スタートアップではどのように成長をしていく必要があるのか?と言うお話ができればと思います。これは若手と中堅に分けて考えてみます。若手の場合は、「中堅の先輩から学ぶ」と言うのが一番いい方法かもしれません。それは、スタートアップには優秀な中堅社員が集います。その先輩は本当だったら大手企業でマネージャークラスになっていた人かもしれません。そんな人と若い時からOJTとして横で仕事をすると言うことはなかなか得られる機会ではありません。この機会を活かして成長していってほしいと思います。

また風通しの良い社風の会社が多いので、マネジメント層と一緒に仕事ができる機会も大企業と比較すると格段に増えるでしょう。マネジメントの考え方や見ている景色を少しでも感じ取ることができるだけでも、今後の自身のキャリアにはプラスになるはずです。また中堅社員の場合は、会社と関与のあるVCや、外部顧問・コンサルタント、そして自社のマネジメントと一緒に仕事をすることで、彼らの知見をしっかりと吸収し自分なりに咀嚼し実力に成長につなげていくことが大切です。特に自社だけではどうしても学びが得られなくなった時に、外部の専門的な知識やスタートアップとしての成長経験をしてきた人に学びを求める中堅社員も少なくありません。メンターの依頼を個人的にするなど、成長を求めた行動は行うことをお勧めします。

さいごに

長々と書いてきましたが、これらメリットデメリットをしっかりと検討した上で、結局は、自身がどんな仕事をしたいか、仕事を通じてどのような人生を送っていきたいか、に尽きるのではないでしょうか。まずはデメリットが目につき不安に思ってしまうかもしれませんが、スタートアップ企業のメリットをよく理解し、まだデメリットについても上記のような考え方もできることを知った上でチャレンジをしてみると、これまで見えていなかった世界が見えてくるかもしれません。

この記事の執筆者

MonzawaShin

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